My Life Style
美し山の、ハレとケ
美し山の、ハレとケ(非日常と日常)
<Sumika vol.30>

2022年10月にオープンした「ここのつ」。
広場や小径のある緑豊かな敷地には、カフェ、ショップ、ギャラリー、アトリエが点在。
暮らしを彩るヒントやエッセンスを探して春風に竹林が揺れる美山の里を訪ねた。

カフェと雑貨、 グッズのお店「valo」 WORDS & PHOTOGRAPHS by TAKAHIRA Yuuki
美山の里で出会うここのつの感覚
鹿児島市内から車で約25分。ドライブがてらに足を伸ばせば、ものづくりの里として知られる美山に到着。里山の木々は春の光を浴びて勢いよく葉を広げ、背比べをするように空に伸びる竹林はゆったりと風に揺れている。
緑豊かな空間に、カフェ、ショップ、ギャラリー、アトリエが点在する『ここのつ』は、2022年の10月にオープン。”幸せのサイクルが生まれる場所”として、ヒトやモノやコトやアートが繋がり、巡る場所として人気を集めている。
ここは、視覚、聴覚、嗅覚、味覚、触覚の”五感”と、春夏秋冬の”四季”を合わせた、ここのつの新しい感覚に出会える場所。運営するのは九州を中心に店舗デザインや住宅リノベーション、家具デザインなどを手掛ける『株式会社ナインズ』。代表の筒井敏郎さんはショップの挨拶文の中で「自然の中で、大人も子供もゆったりとここちよく過ごせる場所。そこで過ごすことは、誰かを喜ばせたいとき、あの人に会いたいとき、自分へのご褒美もいいかもしれません」と記している。
『ここのつ」は、折々の季節と移りゆく風景を通し、様々な空間でゲストをもてなす。五感に四季を加えた「ここのつ」の感覚と感動が、何気ない日々を特別な一日に変える。筒井さんは「ここで時間を過ごして、何事にも代えがたい”ささやかな幸せ”を感じて欲しい。あなたが探している何かがきっと見つかるはず」だと話す。
光がそそぐ店内
軽食も美味
用の美がそろう
ギャラリー『isado』
「イサド」とは、 宮沢賢治の小説に登場する架空の地名。
小説では土地の詳細は語られていないが、 ワクワクする場所、 新しい発見や出会いがある場所としてギャラリーの名称とした
非日常と日常のはざまを行き来する小さな旅
『クラムボン広場』や『ギャラリーイサド』などの名称は、宮沢賢治の童話「やまなし」から着想を得た世界観。童話は小学校の教科書にも採用されており、「クラムボンは笑ったよ」「クラムボンはかぷかぷ笑ったよ」のフレーズがおなじみ。
元々、『ここのつ』の敷地にはみかんや柿など様々な果樹が植えられており、童話のタイトルにもある「やまなし(梨の原種)」も育てられている。自然林と果樹園が織りなす風景は、まるで童話や絵本の世界に足を踏み入れたかのよう。
筒井さんによると『ここのつ』には森の妖精はいないが、杜の怪獣「ドングー」「ここのん」「ギギ」の3体がどこかに隠れているとのこと。怪獣を具現化したのは鹿児島在住のイラストレーター・江夏濶一さん
飲食や物販などの出店ができるレンタルスペースとして運用 古民家をフルリノベーションした 「ここのつラボ」 縁側のある空間
のれんをくぐれば新たな世界が広がる
暮らしのヒントや エッセンスを探しに
多角形の特徴的な外観が目を引く「Valo」は、雑貨と軽食のお店。「Valo」とはフィンランド語で「ひかり」の意。その名の通りアプローチを登って扉を開けば、一面の大きなガラスから陽光が降り注ぎ、窓の向こうには濃い緑の森と、青い空が広がっている。ショップで取り扱うのは暮らしに寄り添う『ここのつ』セレクトの良質で上質なモノばかり。日常使いに、贈り物に、自分へのご褒美に喜ばれている。
ギャラリーでは、アート・器・作品展など様々な企画展を開催。陶芸や木工、絵画、料理など多彩なワークショップにも対応している。
「ここのつラボ」は、飲食店や物販店を始めたい人のためのチャレンジスペース。日替わり、週替わりなど希望する期間でレンタルでき、多くの発見や挑戦に出会うことが出来る。
敷地の奥には『ここのつ』を運営する『ナインズ』のアトリ工があり、客人が利用できるゲストハウスも隣接している。
『ここのつ』ではカフェ、ギャラリー、ラボ、広場などを用途に合わせてレンタルできる催しも積極的に開催。とくに清々しい空気感の中で執り行われるウエディングパーティーは、忘れられない思い出になるはず。
緑と光に抱かれた「ボラーノ広場」