課題絞り太い芯づくりの経営
コンセプトは性能重視の快適な家
父親の藤男さんは、中学校卒業と同時に大工に弟子入り。当時は夜間の建築科がなかったため、働きながら鹿児島工業高校電気科で学んだ。「高校だけは卒業しなくては…」という使命感に燃えての入学だったという。
高校卒業後、一人親方としてスタート。大工としての自信が備わり、それなりの人脈、実績もできた1994年に日置住建を設立した。1棟1棟手間暇を掛けて丁寧に造る職人技の家づくりは評判を呼び、コツコツ実績を積み上げた。
その父の背中を見て育った大輔さんは、中学校時代に大工になることを決意。学校の担任からは「厳しい世界だぞ」と言われたが、奮起して薩南工業高校の建築科に進んだ。「まったく迷いはなかった。人にも感謝される魅力的な仕事」と、大工に惚れ込んでの決断だった。もともと手先も器用でモノづくりが大好き。入学後は水を得た魚のように勉強し、建築の基礎を身に付けた。
「お客様が求めているニーズは何か、どうすれば満足してもらえるか。お客様と造り手が互いに求めるニーズのマッチングを見極める。プランニングが終わったら一つ一つ問題点を解決しながらお客様と一緒になって家を完成させる」と語る2代目。さらに、「まだまだ修業の身。今やらなければならないことをしっかり見極め、そして課題や問題点を絞り込みながら、信念を持って自分なりに経営の太い芯を紡いでいきたい」と前を向く。
「大工としてはまだ半人前」と、照れ気味に日焼けした顔をほころばせる。「お客様を裏切らない、困らせない仕事をして〝信頼〟の二文字を地域、会社にしっかり根付かせたい」と、白い歯を見せる。
父親に加え、経理担当の母・敦子さん、それに弟の勇太さんと4人の家族経営。「まだ父から学ぶことも多い。だから1日も早く一人立ちしたい」との思いで、現場と事務所を駆け回る毎日。少子高齢化等で地場工務店の置かれた環境は厳しい。でも、必ず生き残る道はあるという。「クオリティーの高い家を極める中で、リノベーションやリフォームを絡めながら需要を取り込む。基本をしっかり学びながら時代の変化に合わせる経営を追求する」と、変化への対応を重視する。そのためにスーパーウォール工法の研修セミナーなどにも積極的に参加している。家づくりのコンセプトは「安心・安全・快適・健康」。高気密・高断熱に加え、顧客ニーズに対応した性能重視の家を基本に据える。
「家づくりは、人とのお付き合いから始まるんです。その中で何をアピールし、売り込めるか。結局は人対人の思い、価値観の共有が大切。造り手の思いがお客様に伝わらないと、本当の家づくりは実現しない。そのニーズをくみ取ることに毎日心を砕いている」と、家づくりに対する思いを語る。「やるからには地域一番になることが目標。ハードルは高いがやり甲斐もある」と、2代目は気合を込める。